マリア
第5章 三重奏曲
智side
「花火大会?」
礼「そ!ね、翔くん?」
翔「智くんも一緒にどうか、と思って?」
二宮くんと別れたあと、
何事もなかったかのように病室に戻ると、
何事もなかったかのように翔くんと礼音は普通におしゃべりをしていて、
来月、花火大会があるから一緒に行かないか、との話になっていた。
「な、何で僕も一緒に行かなきゃならないの?二人でいけばいいじゃん?デートなんだし?」
礼「まあ、そんなこと言わないでよ。電車で行くから、もし、私に何かあったら智も一緒だと心強いと思って?」
「そうかもしんないけど…」
ちら、と翔くんの顔を伺った。
そこには、先ほどの王子さま然とした翔くんはいなくて、
普通ににこにこしているいつもの翔くんがいた。
翔「俺も。もし、礼音に何かあったら、俺一人じゃ礼音を抱えらんないし。」
礼「ちょっとぉ、失礼じゃない?私、そんなに重くないから?」
と、隣で含み笑いを浮かべる翔くんを叩く真似をしてみせた。
「………。」
もしかしたら…
もしかしたら翔くんも礼音も、
キス以上の関係なんて望んでないのかな?って、
松本先生に聞いたことだって、
余計なことだったのかな?って、
何故か、この時ばかりは、そう思ってしまったんだ。