
マリア
第28章 慟哭曲
人の人生を壊し、
人の心を壊し、
その人そのものを壊した。
そして、今正に、
僕は、愛し、愛してくれた人の人生までを台無しにしようとしている。
だから…
だから、ゴメンね?
もう終わりにするね?
向かった先は、思い出の公園。
一基だけの、古いブランコのある公園。
初めて二人だけできた場所で、
初めてブランコに乗った。
翔くんは「僕はいいから智くんが乗りなよ?」って、翔くんは僕が乗ったブランコを押してくれた。
あの感動は今も忘れない。
背が低くて、手を伸ばしても届きそうになかった空が目の前にあった。
もうちょっと、あとちょっとで手が届く、って思ったら、翔くんにもっともっと、って催促してた。
そして、伸ばした手のひらに空を感じた瞬間、僕の体はブランコを離れ、宙に浮いた。
飛べた、って思った。
掴めた、って思った。
でも、それは本当に一瞬の出来事で、
勢い余ってブランコから落ちた僕は額を数針縫う大ケガをしてしまった。
