
マリア
第28章 慟哭曲
翔side
冬の早い夕暮れに急かされるように、俺は智の待つあの公園へと急いだ。
辺りは天気のせいもあって閑散としていたけど、
近くに学校があるため、等間隔につけられた街灯が煌々と公園までの道のりを照らし出していた。
この街灯を辿っていけば…
あと少しで智…君に…。
逸る気持ちを押さえつつ、
重い鞄を抱え直しながら、公園へと足を踏み入れた。
不思議なことに、
あんなに激しかった雪は止んでいて、
公園内は白一色に彩られていた。
「智…?」
呟きにも似た俺の声でさえ響き渡りそうなぐらいに静まり返った公園。
一歩踏み出すたびに足元の雪がサクサクと鳴った。
どこにいるんだろ?
雪化粧したベンチにカバンを置き、智の姿を探した。
ふと、雪の上に続いてる足跡を見つけ辿ってゆくとその先にはあのブランコがあった。
初めて二人で遠出をし、
初めて乗ったブランコ。
懐かしいな……。
近づいてみると、どこか違和感があるそのブランコ。
その、ブランコを支える支柱はこんもり雪を被っているのに、
座板の部分には雪が全然なかった。
不審に思い、目線をブランコの前方に向けると、うっすら雪を被った赤い布地のようなものが落ちていて、
その近くにはやはり、うっすら雪を被った大きな塊が横たわっていた。
