マリア
第5章 三重奏曲
僕が家に着いた時には礼音の様子も落ち着いていて、
額の汗を濡れたタオルで拭ってやると、小さな声で礼音はありがと、と笑った。
翔「ごめん…俺、何て言っていいのか…。」
翔くんは僕の後ろで俯いていた。
「何があったかは後で聞くとして、取りあえずはよかった。」
礼音は僕の笑った顔を見て、ばつが悪そうにシーツの中に潜り込んでしまった。
翔「あの…さ、智くん。ちょっと、いい?」
翔くんが顎でドアの外を指し示す。
「何?」
翔「ごめん、俺、加減が分からなくて…その…。」
何を言おうとしているのかがよく分からなくて翔くんの顔を黙って見ていると、
顔だけじゃなくて耳まで真っ赤なことに気づいた。
「翔くん、熱でもあるの?」
翔「えっ!?な、何で?」
「顔…赤い…から。」
翔「あっ…そ、そう…かな?」
「それより、僕に話、って何?」
翔「うん…その…智くん、てさ、女の子とその…。」
「女の子と?何?」
よく見ると、翔くんは顔が赤いだけでなく、
額からは汗が伝い落ちていた。
翔くんは、流れる汗を拭いながら、物凄く小さな声で言った。
翔「キス…以上のこと、した経験、ってあるのかな?と思って?」