マリア
第5章 三重奏曲
礼「翔くん?」
「ん?ああ、多分。」
開いてみるとやっぱり翔くんで、
礼音を怒らせてしまったことを詫び、
埋め合わせがしたい、との内容だった。
「どうする?」
礼「話がしたい。二人で。」
「じゃあ、そう言っておくね?」
そう返したあと、翔くんからすぐに承諾の返事が返ってきた。
翔くんを家に呼んで礼音と話をするという日。
僕は、ちょうど文化祭が近いとあって模擬店の看板作りの助っ人に借り出されていた。
やっと解放された頃にはもう日は傾いていて、
今ごろきっと、礼音と翔くんは和気あいあいとしているんだろうな、と思ったら足取りも軽かった。
そんな時、僕のスマホがけたたましく着信を知らせた。
え?翔くん?
どうしたんだろ…。
翔『よ、よかった!やっと繋がった。』
安心したような翔くんの声。
でも、それは、すぐに切羽詰まったものに変わる。
翔『薬…礼音の薬…どこにあるのか教えて?』
発作…!?
「ベッドの側に、礼音が大事にしてる宝石箱があるんだ。」
翔『宝石箱?』
「表面に天使の彫り物がしてあるヤツなんだけど…」
スマホを耳に当てたまま、
僕はなかなか変わらない赤信号を睨み付けた。