マリア
第6章 練習曲
「アヤ、ごめんね?」
礼「どうしたの?」
礼音のベッドサイドに腰かけ、自分のせいで翔くんを怒らせてしまったことを話した。
礼「そう…」
礼音は俯き、シーツをきゅっと握りしめた。
「僕、後で翔くんに謝りに行ってくるから。」
すると、礼音は俯いたまま首を何度も左右に振った。
礼「いいの、智。謝らなくて…」
「でも、このままじゃ翔くんとダメになる…」
礼「…いいの、それで。」
「アヤ…」
礼「翔くんにとって、私は重荷にしかならないから…」
「翔くんが…そう言ったの?」
無言で首を振る礼音の体を強く揺する。
「じゃあ、僕が謝れば…」
礼「もういいってば!!」
声を張り上げたあと、小さくうめき、胸を押さえた。
「アヤ…っ!」
前のめりになった礼音の体を抱きかかえる。
礼「私が発作を起こした時の翔くん、とっても怯えてた。」
苦しげに呼吸を繰り返しながら、礼音は言葉を絞り出す。
礼「今、ここで私に死なれたらどうしよう?って顔してた。」
「そんな言い方…!」
声を押し殺し、礼音が笑う。
礼「だから、いいじゃない?このまま私と翔くんが終わったって…」