マリア
第7章 恋慕曲
翔side
智「僕…に?」
ムカついてる、っていうのはホントだった。
でも、それは、
智に邪な感情を持ってしまった自分だったり、
そんな自分の気持ちを誤魔化すために智に当たり散らす自分だったり、
そんな俺の気持ちを逆撫でする二宮という男だったりするけれど、
俺の気分を害してしまった、と気遣う裏で、
医者という仕事に全身全霊で打ち込むイケメン精神科医に靡いている智だったりするんだ。
智「この間のことだったら謝るよ。翔くんの気持ちを無視してあんなことを先生に相談した僕が悪かった。だから…」
『先生』…?
って、まさかと思うけど……
振り向くと、智は泣きそうな顔で俺を見た。
「のさ…相談した先生、って?」
智「え?」
「だから…俺と礼音のことを…」
智「あ…あの…松本先生…二宮くんのお兄さん…に。」
ウソ…だろ?
顔が羞恥で熱を持つのが分かる。
智「翔くん、ホントにごめん!悪気はなかったんだ!!」
…そうだろうな?
いつだってそうなんだ、君って人は。
今まで、悪気なんてなかった、って、涙ながらに謝るから許してきたけど、
でも、ごめんね?
今度ばかりは君のこと、
許せそうにないよ…。