マリア
第7章 恋慕曲
じゃ、メールするね?と、二宮くんは、僕らと反対方向に歩いていった。
二宮くんの後ろ姿を見送ったあと、僕がトイレから戻ってきてからずっと不機嫌そうに黙り込んでいた翔くんが、聞こえよがしに大きなため息をついた。
「翔くん、どうしたの?」
翔「どう…って?」
「もしかして、怒ってる?」
それには何も答えず、翔くんは背を向けずんずん歩いてゆく。
翔くん、怒ってる…。
それは、人の気持ちに鈍感な僕でも分かるほどに。
恐らく、僕が席をはずしている間、
二宮くんと二人きりの時に何かあったに違いなくて、
それを確かめる術を持たない僕は、ただ…
ただ、駅まで後をついて行くことしか出来なかった。
それでも、
二人揃って駅のホームに降り立った時、
やっぱり、無言で立ち去ろうとしている背中に、思いきって声をかけてみた。
「二宮くんと何かあった?」
翔「別に…何も…」
「でも、怒ってる…よね?」
翔「そう見える?」
「うん…」
翔「じゃあ、ムカついてんのかもね?」
…やっぱりそうなんだ。
翔「……智くんに。」