マリア
第7章 恋慕曲
ウソ…ついちゃった。
だって、そうでもしないと警戒心、解いてくれそうにないし。
…って、思いっきし下心丸出しだから無理もないか。
智「あの…」
「へっ?」
智「待つ、って言っても…どうすれば…?」
やべぇ…考えてなかった。
とっ、取り敢えず…
「グランド、行ってみない?」
智「グランド?」
「翔ちゃんの…サッカー部の練習、見に行かない?」
智「翔くん…の?」
しばしの沈黙のあと、少し寂しそうに笑った。
智「…ごめん。やっぱ、いいや。」
と、帰りかけたその腕を思わず掴んだ。
「翔ちゃんに会いに来たんじゃないの?」
智「そう…だけど、特に急いでる訳じゃないから。」
何か、会うのを躊躇ってるみたいな気もするんだけど…?
智「あの…」
離してくれと言わんばかりに、掴まれた腕と俺の顔を見比べる。
「あっ!?ご、ごめん。」
智「じゃあ、僕はこれで…。」
ペコリ、と頭を下げると、
彼は重そうな足取りで歩きだす。
「あっ…!?あの…さ」
今度は、本当に迷惑そうな顔で振り返って俺を見た。
智「まだ何か?」
「翔ちゃんの練習が終わるまで俺と…」