両親の部屋を盗撮したらとんでもない秘密を……。
第1章 プロローグ
「お前ってホントにクズ野郎だな。生きてる価値ないよ」
一瞬、竹中が言ったのかと思って僕は顔を上げた。
けれど、竹中はアクビをしながらスマホをいじっていた。
たしかに竹中の声とは明らかに違った。
地獄の底から響いてくるような不気味な声だった。
「もう殺しちゃえよ」
再び声がした。
「だっ、誰だ!誰なんだ!」
僕の声は悲鳴になった。けれど相手は、まるでそんな僕を嘲笑うように冷淡な声で話す。
「人を殺してみたかったんだろ?グッドタイミングじゃないか、こんなヤツ殺したほうが世の中のためだ」
「バカいうな冗談じゃない。それはあくまで願望だ。だいたいそんなことをしたら僕は犯罪者になってしまうじゃないか」
「それは大丈夫だ。心配するな。俺にまかせとけ」
「まかせとけって…」
「お前、さっきからなにひとりでブツブツ言ってんだよ」
とつぜん腕をつかまれてハッとした。
竹中だった。
僕は竹中の腕を乱暴に振りはらった。
あとのことはあまり覚えていない。