わたし、お金のためならなんでもします。
第1章 プロローグ
「5…4…」
今度こそちゃんと答えなきゃ…
日本人の死因のトップはガンなんだから、確率的には間違いなく末期ガンなんだけど…
でも見た目の印象からすると多重人格者っぽいんだけど…
こういう問題って、なんだか底なし沼にはまってるみたいに、考えれば考えるほどわからなくなるんだよね。
ていうか、長いこと悩むことなく能天気に生きてきたせいで、ちょっと考えただけで頭が痛くなってくる。
まっ、いいか適当で、今日はたまたま10万円を手にするチャンスがめぐってきたけど、もともとなかったもんだと考えればいいんだよね。
もう、なんだかめんどくさくなってきた。もう多重人格でいいや。
いや、まてよ…
これがわたしの悪いくせだ。そう、わたしはいつもそう。
後先を考えず、つぎからつぎへと必要のないものばかり買いあさって、けっきょくいつも後悔するんだ。
たぶん今回も適当に答えたあげく、外れたらきっとこんなふうに思うはず。
やっぱりあのとき、ちゃんと考えればよかったあああ!なんてね。後の祭りだっつーの。
「美咲はやればできる子なのよ」って、お母さんもいってたじゃない。
そう、わたしはやればできる子なのよ。
よし、ちゃんと考よう。冷静に考えればきっと答えが見えてくるはず。
あっ、そうだ。たしか多重人格って、解離性なんとかっていうちゃんとした病名があるはずなのに、男はそれをいわなかった。
しかも病院から抜け出してきたっていうことは、たぶん入院してるってことだよね?
解離性なんとかっていうのは、たしかに精神病の一種なんだろうけど入院までする必要があるとは思えない。
「2…1…」
「お客さんの病気は末期ガンですよね?」
「くくくくくっ」