わたし、お金のためならなんでもします。
第1章 プロローグ
「ふぅ…」
「ふぅ…って、おまえふざけてんのか」
「え、」
深く、長い眠りから覚めたようにゆっくりマブタを開くと、男が呆れた顔でわたしを見ていた。
悪いクセだ。考えごとをしていると、周りが見えなくなってしまう。気をつけなきゃ。
「え、じゃねーよ。10秒以内に答えろって言ったよな?」
「ごめんなさい…」
「ごめんなさいじゃねーだろ。おまえがサクサク答えてくれないと、ホント、マジでイラつくんだけど、もうほかの女を指名していいか?」
「いやっ、だっ、だめ、お願いです。すぐに答えますからもう一度だけチャンスを下さい」
「ちっ、しかたねーな。わかったよ、じゃあもう一度だけチャンスをやる。制限時間は5秒間だ。これが最後のチャンスだから今度こそぜったいに答えろ、いいな?」
「はい、しょうちいたしました」
「おまえって、あいかわらずお調子者だよな…」
「は?あいかわらずって…」
「ふっ、じょうだんだよ…じょうだん…そんなことより早くしろ、カウントダウン始めるぞ」
「はーい、わかりました」
あぁマジでびっくりした。わたしのこと知ってるのかと思ったし。あんまり驚かさないでよ。