わたし、お金のためならなんでもします。
第1章 プロローグ
櫻井翔くんのお嫁さんかぁ……。
あまりにも、ありえなさすぎて笑けてくる。
櫻井翔くんどころか、こんなバカ女と結婚してくれるような男なんて、日本中どこを探してもいないって……。
それはともかく、倹約家だったお母さんはわたしに二つのことを教えてくれた。
ひとつは、お金は大切に使ってくれる人のもとに寄ってくる。
そしてもうひとつは、お金は生きているうちに使わないとただの紙クズになってしまうということ。
たしかに無駄づかいはしないほうがいいに決まってる。けれど人にはだれにでも物欲というものがある。
だから欲しい物を手に入れるためにみんな色んなことを犠牲にして必死になって働いてる。
ただし、欲しい物というのは、生きていくために必要な物ばかりとは限らない。
人間は下等生物とちがって空腹を満たすだけでは満足しない。
たとえば、物欲の大半は無駄なモノを買うことだ。つまり、「無駄づかい」という消費行動が快楽だったりする。
けれど忘れてはいけないことは程度だ。なにごともやり過ぎはいけない。料理も人生もさじ加減が大事。
出る杭は打たれ、出すぎた杭はへし折られる。なにごとも限度を越えてはいけない。
身の丈を超えるようなことをすればまちがいなく破滅する。
そう、いまのわたしみたいに……。