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赤い鴉

第4章 sunny

「く、九条!?」
迅がタケルの身体を抱き締めた。
「そばにいるから安心して眠れ」
タケルは迅の背中に腕を回し胸に顔を埋めた。



「ん~」
「起きたか?」
「うわっ!?」
目を開けると迅の綺麗な顔が近くにあり思わず声をあげてしまうタケル。
「身体は大丈夫か?今日は学校休むか?」
「大丈夫…慣れているから」
心配する迅に照れるタケル、タケルが照れるあまり失言をしてしまったせいで迅は顔をしかめる。
ベッドから出てリビングに向かうと大河がスーツを着て会社に向かう準備を済ませていた。
「ふたりとも朝ご飯は作っておいたから食べなさい」
「ありがとうございます」
大河はそう云って家を出た。タケルと迅は大河の作った朝ご飯を食べて学校に向かう。



「……ッ…」
学校に向かういつもの電車…下半身を触る手にタケルは青ざめる、痴漢はいつものことだが今日は迅も一緒にいる。迅を巻き込まないように必死に声を抑えるタケル。相手はひとりだがきわどい場所ばかり触れられる。
(やべ…む、り…)
「おじさん?次僕の友達にこんなことしたら潰すよ」
あと少しで声をあげそうになった瞬間…迅の低い声を耳にする。男の手がタケルの下半身から離れていく。
「大丈夫か?」
これで迅を心配させるのは何度目だろうか?
「大丈夫…それとごめん」
「なにが?」
「心配かけてごめ…ひゃん!?」
「…ぷっ」
迅に急にデコピンされ驚くタケル。大袈裟な反応に迅は吹き出す。
「気にするな」
迅はタケルの腕を引いて壁際まで連れて来るとタケルの両側に手をついてタケルが人混みに飲まれないようにする。
「九条…」
「これなら痴漢にあうことないだろ?」
迅の優しさにタケルの胸が熱くなる
「なぁ?綾瀬っていつも何時くらいに出てるんだ?」
「7時半過ぎてからだけど、なんで?」
「もっと早く出れないか?」
「で、出れないことないけど、だからなんで?」
「一緒に学校行くため以外なにがある?」
「えぇ~!?」
いきなりの提案にタケルは驚愕する。
「で、でもまた今日みたい…」
「今日みやいなことにならないように一緒行くんだろ?」
迅の真剣な瞳がタケルを射抜いた。

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