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赤い鴉

第4章 sunny

「嫌か?」
「い、嫌じゃない、けど…」
「けど?」
「なんで…なんでそこまでするんだよ」
「綾瀬が可愛いから守りたくなるんだよ」
カーッと顔が赤くなるのが自分でも分かる。普段のクールな迅に甘く優しい声で口説かれれば誰だって堕ちるだろう。
「うあ…それズルい」
「ズルいのは綾瀬も同じだろう?こんなに可愛いのは反則だ」
迅に可愛い可愛い云われ恥ずかしさはマックスに達した。
「そ、そんなに可愛い可愛い云うなよ恥ずかしい」
「ゴメンゴメン」
迅はタケルのこう云うところが可愛いんだよなと思ったが口にしなかった。




「綾瀬…帰るぞ」
「今日は勉強しないのかよ」
「いや、これから綾瀬の家でやろうと思う」
「なんで?」
「あんなことあったばかりだからだ、これからは基本帰りも一緒だからな」
あんなことを2度と起こさせない…迅の心にはそう強い決意があった。
「で、でも九条にはバイトがあるんじゃあないのか?」
「あぁ…やめたから大丈夫」
「やめた!?」
「そうだよ、来年受験だからな…大学は良いところに行きたいし」
大学名を訊いたタケルは目を剥いた。
「俺のこと心配している場合じゃないだろう!?」
「その大学知っているのか?」
「兄貴がその大学だったんだ」
「大河さんが?」
迅は記憶を辿って大河を思い出す…ただのサラリーマンにはない知的な雰囲気になるほどと納得する。
「結構、授業料高そうだから他のところにしようと思ったけど、就職に関わることだからケチなこと云うなって叔父さんが」
迅が肩をすくめた。辛い環境なのに歪むどころか他人を気遣える迅を眩しく感じるタケル…思わず自分も頑張らないといけないようなそんな気持ちになる。




「ここは」
タケルのマンションで勉強を始めるふたり…タケルは勉強に集中しようとするが迅のことが気になって勉強に集中できずにいる。
「疲れたか?」
最近いろいろあったみたいだしなと云ってシャーペンを置く迅。
「だ、大丈夫…」
「今日はここまでな、明日も迎えに来るよ」
帰る迅を見送ったあと、タケルは自分の部屋に入る。

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