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すきってきもち

第3章 後ずさり




「お店どこだっけ?」


立ち止まってたら迷惑になる
とにかく進まないと

でも、ここが分からない
見たことある気はするのにな

「分かる道まで戻れもできないや」


ダメダメだな……私

OKを貰える物は描けない、影口は言われ……
言われた事の理解もできないっ
「っん……ふぅーぐすっ……ん、」

泣きたくないのに……
食いしばる歯は意味をなさず
次から次へと

昼間我慢した分も
心に溜まったモヤモヤ分も
入ってる力の分も

次から次へと、次へと、、、

すれ違う人々に白い目で見れてる
止めたいのに次から次へと


こんな自分が嫌だ
笑ってしまうほどに惨め


「ツラい、な」
言葉と共に膝から力が抜けた
うずくまって、まだ次から次へと


「ツラいよ……」
「大丈夫、俺がいる」

えっ?
「泣きたいだけ泣いて?」

声で、香りで、手の温かさで
「レイ……さ、ん?」
「ん?」

分かってしまった


「ごめんなさい、、すぐ終わるから」
「やっぱり俺といるの嫌だ?」

一瞬でよみがえるのは
あの雨の間に合わなかった
レイさんに会わないと決めた、あの日

「ちがっ!」
「なら、俺に側にいさせて」

請うような声で言うけれど
すがってるのは私

肩を抱かれて、こてんと頭を乗せられて
その優しさにすがってるのは私


ごめんなさい、レイさん

もう少しこのままでいたい……

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