原稿用紙でラブレター
第3章 消費期限は本日中
たくさん作った料理は食べ盛りの相葉くんのおかげでほとんど無くなった。
テーブルの食器類を片付けてケーキを出そうと準備をしていると、ソファに座る相葉くんから声を掛けられて。
「にのちゃーん!ケーキまだ入んないからさ、こっちでテレビ観よー」
そう言われ、それもそうかと冷蔵庫にケーキを仕舞ってソファに向かった。
ぽすんと隣に腰掛ければ、ふふっと微笑まれて顔が熱くなる。
松本先生からの指令を遂行する度、相葉くんの反応が気になって仕方がなかったから。
こんな感じで…
ほんとにムードって作られてるの?
未だ実感のない成果に戸惑いつつ、少し空いた相葉くんとの微妙な距離を詰めようかどうしようかと迷っていた時。
ふいに右手を取られ、ぎゅっと握られて。
驚いて視線を向けると、優しい眼差しで見つめてくる整った相葉くんの顔。
「…今日はありがと。すっごい美味しかった。
もう俺さぁ、超幸せ」
目尻を下げて心底幸せそうに笑うその顔に、じんわりと心が満たされていくようで。
相葉くん…
「俺の為にしてくれたんだって思うとさ…
嬉しくてたまんないの」
穏やかな声で紡がれる言葉が耳に心地良く届く。
「ほんと…
大好き、にのちゃん」
言い終えてこちらを見つめる眼差しは、慈しむように輝いていて。
同時に、相葉くんが纏う雰囲気がふっと変わった。
それは、これからのことを暗示するかのような色を帯びていて。
あ、これって…
「ねぇ…キスしていい…?」
握られた手にぎゅっと力が込められ、揺れる瞳で見つめられる。
トクトクと鳴る心臓はそのままに、返事の代わりにそっと瞼を閉じた。
ゆっくりと触れられた、相葉くんの唇。
そのしっとりとした感触に体の奥がジンジンと熱くなってくる。
沿うように合わさった触れているだけのキス。
いつもはそこで、どちらともなく唇を離すけど。
今日は…
一歩、踏み込まなきゃ…
心臓の音が鼓膜にドクドクと響く。
触れていた唇を微かに動かせば、いつものようにそっと離れようとする相葉くんの唇。
待って…
それを拒むようにして、ちゅっと再び唇を押し当てた。