原稿用紙でラブレター
第3章 消費期限は本日中
再び訪れた柔らかな感触に驚く間もなく唇の隙間を割って入ってきた熱い舌。
突然深くなったキスに思考が追い付いてこない。
えっ!?
にのちゃんっ…
握っている小さく丸っこい手は、ぎゅっと堅く拳を作っていて。
今まで、にのちゃんからこんな深いキスをされたことなんてない。
それどころか、あの遊園地での一件以降はほんとに触れるだけのキスで終わってたんだから。
なのに、まさかこんなに積極的に求めてくるなんて…
フワフワとそんなことを考えていると、はぁっと吐息を溢して唇がゆっくりと離れていった。
いつの間にか密着するように寄り添われていたようで、至近距離でにのちゃんの顔を捉える。
濡れた薄い唇と、赤く染まった頬。
どこか不安気に俺を見つめる潤んだ瞳から目が離せなくて。
「今日は…誕生日だから…」
艶めいた唇が僅かに動いて、ぽつり小さな呟きが届く。
「相葉くんがね、欲しいもの…
準備してきたの…」
語尾が消え入りそうな程小さな声がしたと思ったら。
急に体が離され、ソファの上に正座をするにのちゃん。
訳が分からずただその様子を目で追っていると、パーカーのポケットに左手を差し入れて何かを取り出して。
そのまま右肩にぺたんとくっつけて居住まいを正し、真っ直ぐに俺を見て口を開いた。
「俺を…
もらってくださいっ…!」
言い終えてぺこっと頭を下げたその肩には、よく見るとプレゼント用のリボンがついていて。
まるで予想だにしなかった言葉に一瞬で頭が真っ白になる。
…え?
もらって…ください…?
待って、それって…
えぇぇぇーーっ!?
言葉が出ない俺を不安に思ったのか、おずおずと顔を上げたにのちゃんが眉を下げて見上げてくる。
にのちゃんの言葉をようやく理解できたけど。
いやまだ信じられないけど…
それってほんとにほんとなの…!?
いいの…?
大丈夫、なの…?
「やっぱり…いらない…?」
"冗談だった…?"と泣きそうな顔で言うにのちゃんを慌てて近寄り抱き締めた。
「っ、いらないわけないじゃんっ…!
でもほんとに…いいの?」
抱き締めた耳元でそう訊ねれば、こくんと控えめに頷いて回された腕にぎゅっと力がこもった。