原稿用紙でラブレター
第3章 消費期限は本日中
まだドキドキが治まらない。
にのちゃんにふいに口元を触られたかと思ったら、ついてたご飯粒をぱくって…
俺についてたご飯粒をぱくって…
そんなことにのちゃんがしてくれるなんて思いもしなかったから。
なんだろ、今日誕生日だからかな…?
普段なら絶対しないようなこと、今日は特別だからしてくれてんのかな…?
だとしたら俺…
幸せ過ぎて死にそう!
うっすら涙さえ込み上げてきて、この幸せな空間がずっと続けばいいのになんて心底思った。
向かいには、時折俺をチラッと見ては頬を染めながら微笑むにのちゃんが居て。
こんな美味しい料理を毎日食べれたら…
なんて、夢みたいな話だよね。
モグモグと口を動かしながら妄想に耽っていると、向かいから小さな声が届いた。
「相葉くんこれ…最後食べる?」
皿に一つだけ残った唐揚げを指差し、こちらに窺うような視線を送る。
「あ、いいよいいよ。
にのちゃんあんま食べてないでしょ?」
「ううん食べたよ。
相葉くん好きでしょ?唐揚げ」
「いやいいよ、にのちゃん食べなよ」
「いや、相葉くんにあげるから…」
「俺はたくさん食べたからいいって、」
「いや相葉くんに、」
数回その押し問答が続き、やけに引かないにのちゃんを不思議に思っていると。
「じゃあ…半分こにします…?」
と、急に敬語で言われて"うん"と頷いた時。
「あーん…」
箸で摘まんだ唐揚げを口元へ差し出され。
小さく、でも確かにその声が耳に届いて。
「…へっ?」
「えっ?」
「あ…」
「っ、ぁ…いや、ごめ…」
突然のことに拍子抜けした声しか出ない俺。
目の前のにのちゃんは、顔を真っ赤にして差し出した唐揚げを引っ込めてしまって。
…いやいやいや待ってっ!
「あ、ちがっ!
ちょ…ちょーだい?にのちゃん、」
焦りつつそう言って大袈裟に口を開ければ、赤い顔のままのにのちゃんの手がそろそろと伸びてきて。
「ぁ、あーん…」
「あー…、んっおいしいっ!」
半分齧って満面の笑みを向ければ、恥じらいながらもう半分の唐揚げをぱくっと可愛らしく口に頬張った。
その光景に、また胸がときめいて。
ちょっとどうしたのっ!?
にのちゃんもう…
大サービス過ぎるよー!