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原稿用紙でラブレター

第3章 消費期限は本日中





扉の向こうで微かに聞こえるシャワーの音に段々と緊張が高まってくる。


ワンルームでしかも大して広くはないこの部屋。


寝室なんてあるはずもなく。


ソファの上に正座をして対面に置いてあるベッドをじっと眺める。



さっき…
相葉くんに俺の覚悟を伝えたら急にソファに押し倒されたからびっくりして。


一瞬で頭の中にあの遊園地のことが蘇ってきて、慌てて相葉くんの胸を押し返した。


今日は…そういうのじゃなくて。


ちゃんと相葉くんと向き合って…
一緒に進めていきたいから。


でも…
いざとなるとこんなに緊張するもんなんだ。


じっとしてても煩く鳴る心臓がさっきから正常な呼吸をさせてくれない。


大丈夫かな…俺。


…ううん、だめだ。
考えちゃだめ。


もうここまで来たら…
やるしかないもん。


相葉くんと…
やっとひとつに…なれるんだから。



カチャと静かに間仕切りのドアが開いて顔を上げれば、相葉くんが遠慮がちに中に入ってきた。


持ってる中でも大きめのスウェットとパーカーを貸したから、相葉くんには丁度良く着こなされていて。


その姿を見るだけで、また動悸が治まらなくなる。


「あ…先、ありがと。
にのちゃんも、どうぞ…」

「っ、はい…」


たどたどしく発せられた言葉の端々に緊張が見え隠れして伝わってくる。


そんな相葉くんの顔を見ることが出来ず、小さく返事をしてそそくさと浴室へ向かった。



***



熱いシャワーを体に浴びながら、毎夜密かにやっていたようにボディソープを指先に纏い。


いよいよその時が来たんだと思うと…
この指が相葉くんの指に代わるんだと思うと…


はぁっと深呼吸して、慎重に後ろの蕾へと指を進める。



実は、松本先生にはもう一つ言い渡されていたことがある。


それは…
男同士が交わるには相当な準備が要るということ。


だから、出来るなら慣らしていたほうがいいと言われて今日まで少しずつ準備をしてきたんだ。


はじめは怖くて仕方なかったけど、相葉くんがこの事を知ったらどう思うだろうって悩んだけど。


…でも。


相葉くんに…
身を委ねる準備をちゃんとしておきたかったから。



…ねぇ、相葉くん。


こんな俺のこと…
受け入れてくれる…?

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