原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
「いや~やっぱお前やらかすと思ったわ」
職員室の並びは今年もほぼ変わってないらしく、大ちゃんと松潤は俺を見上げながらニヤニヤと笑っている。
「…そんな笑わないでよ」
「おい、こらタメ口きくなお前。それから絶対大ちゃんって呼ぶなよ」
「分かっ…てますよ、大野先生」
ヒヒヒと笑う大ちゃんは回転椅子をクルリと反転させて授業準備に取り掛かった。
朝の全校集会の後、案の定教頭先生に呼び出されてこっぴどく叱られた。
卒業生だからって甘えるな、今日からは一人前の社会人になる為の実習でもあるんだぞと。
今まで幾度となく訪れてきて、勿論教頭先生や他の先生達ともすっかり顔馴染みではあるけれど。
やっぱり教育実習となるとこうも違うんだと改めて実感した。
雰囲気も何もかも今まで遊びに来ていた感覚とは違う。
これからは教壇に立つ側、教育者として俺に接してくるんだって。
この着慣れないスーツやネクタイが、いつしかしっくりくる日が俺にも訪れるんだ。
その為には今日からの実習は全身全霊で臨まないといけない。
夢に見た…
にのちゃんと同じ景色を見れる日がもうすぐ来るんだから。
軽い予鈴のチャイムが職員室内に響き渡ると一斉に動き出す先生達。
それと同時に俺の心臓も一気にざわつきだして。
「さ、今日も行きますかぁ」
うーんと伸びをした松潤が首をコキコキと鳴らして立ち上がり。
「じゃ、頑張って。相葉センセ」
ニッと不敵な笑みで俺の肩をポンと叩き、一足先に職員室を出た。
「…お前のこと相葉先生って呼ぶのなんか癪だなぁ」
「なっ、なんだよそれっ!」
「ほらそれ、ダメだっつってんだろ」
「っ!すみません…」
絶対面白がってるだろう大ちゃんもあくびをしながら出て行った。
その後ろ姿を見送っていると、キィと椅子が引かれる音がして。
「じゃあ…行きましょうか、相葉先生」
トンと教科書を机で揃えてこちらを見上げ微笑む顔。
「…はい、よろしくお願いします」
きゅっと唇を噛み締めて頷けば、そんな俺を見てふふっと笑うにのちゃん。
「…緊張しすぎ」
「だって!そりゃするよ…」
「あ、それ。だめですから、話し方」
「っ…も~にのちゃんまで…」
「二宮先生、です」
「…はい、二宮センセ」