テキストサイズ

原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






実習初日の半分が終わり、ようやく昼休み。


四時限の授業の中で半分は見学だったけどそれはそれで緊張した。


実習生用の控室なんてある訳もなく、俺も他の先生達と一緒に職員室で昼ご飯。


どうしても大ちゃん達と居るのが安心するから狭い机に椅子を持ってきて押し掛けた。


「うぉい!狭いんだよお前!」

「ちょっ、いいじゃないすか!俺にもスペースくださいよ!」


ほんとはにのちゃんのとこ行きたいけど大ちゃんの席が角になってるから椅子持ってきやすいんだもん。


そんなやり取りを松潤もにのちゃんも含み笑いながら見ていて。


その控え目な笑顔に、さっきの授業中気になったことをふと思い出した。


にのちゃんは今年また1年生の担任を受け持っている。


俺らが卒業して受け持った1年生をこの春に卒業させて、その後はまた1年生といった具合らしい。


さすがに担任も二巡目ともなればその扱いにも慣れているような気がした。


授業を見ていて分かったけど、やっぱり1年生と3年生では授業態度も違えばクラスの雰囲気も違う。


自分の時は全然分からなかったけど、そりゃこうもパターンが違うとなれば先生たちも大変だろうなって。


今更ながら大ちゃんをクラス中であれだけイジリ倒していたことに申し訳なさが募る。


そんな授業を目の当たりにして、そして色んなクラスに実際入ってみて。


一番後ろから半袖カッターばかりの背中を見つめてきたけど。


これってさ…
こんだけにのちゃんの周りには男がうじゃうじゃ居るってことなんだよねって。


この中の誰かがもしかしたらにのちゃんのこと狙ってんじゃねぇかなって。


ほら、何年か前にいた有岡みたいに。


しかも今までのにのちゃんはメガネに仏頂面でおまけに無愛想だったからそこまで俺も危機感はなかったけど。


今のにのちゃんはコンタクトだし表情も柔らかいしさっきも授業で緩く笑ってたし。


そんなの前面に出しちゃったらにのちゃんの可愛さに気付かれちゃうじゃん。


いやもう手遅れなのかもしれない。


だってさっき廊下で、


『今日二宮せんせーいいよな』

『俺も思った!あのベスト可愛くね?』

『あとちょっと笑ったよな、今日』

『え、マジ?見てねぇ俺!』


って3年のヤツらが俺のにのちゃんのこと堂々と喋ってたもん。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ