原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
箸を運びながらも頭の中はにのちゃんのことでいっぱい。
今までは変に見えていなかった分、考える余地すら無かったことでも。
こうして目の当たりにしてしまったからには恋人として黙ってなんかいられない。
キョロキョロと周りを見渡して男の先生の動向をチェックする。
…にのちゃんのことヨコシマな目で見てるヤツ居たらただじゃおかねぇからな。
「お、これお前んちのエビチリ?うまそ」
「…ちょっ、勝手に取らないでよ!」
「いいじゃねぇかよ。ほれ、代わりにこれやる」
「いやちくわとか要らないってば!」
大ちゃんのコンビニ弁当から摘ままれたちくわをぐいっと押し返していると。
その隣でざるそばを啜っていた松潤が"そういえば"と口を開いた。
「来週の体育祭晴れらしいですよ。昨日までは雨予報だったみたいだけど良かったですよね」
と言ってまたそばをずるっと啜った松潤。
…体育祭?
え、そうだっけ?もうそんな時期?
エビチリをもぐもぐしている大ちゃんも呑気に"そうかぁ良かったなぁ"なんて呟いていて。
うちの高校の体育祭は大抵この時期、6月初旬の梅雨に入る直前に行われている。
そういえば俺らの時も体育祭前に教育実習の先輩が来てたな、と今更ながら思い出した。
来週ってことはもうすぐじゃん。
「相葉はどこの担当?もう割り当て決まったか?」
「え?俺ですか?」
「まだ初日だしな。後で体育科の先生に聞いとけよ」
「え、あの…俺もなんかやるんですか?」
自分を指差しながら大ちゃんと松潤に問い掛けると。
「お前バカか。何しにきてんだよここに」
「授業やるだけが実習じゃないぞ。校務もやるに決まってんだろ」
二人から一気に畳み掛けられて思わず椅子ごと後ずさってしまった。
そんな俺を松潤の隣で小ぶりなおにぎりを食べながら笑うにのちゃん。
あっ、そんな笑っちゃダメだってば!
「…相葉先生は私と同じ用具準備ですよ」
"教科担当の私と一緒だと思います"と付け加えてぱくっとおにぎりを頬張る。
「やっぱそっかぁ…なんだよ、良かったじゃねぇかお前」
ニヤニヤした笑みで箸を動かす大ちゃんの横で同じ顔をする松潤は。
「じゃあ今年は翔も呼ぼっかな~。相葉も居るって言ったら来るかも」