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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心





翔ちゃんのことを話す時の松潤はこれでもかってくらい緩んだ顔をしている。


今までも学校に来る度に散々翔ちゃんとのノロけ話を聞かされてきたけど。


こんなに月日が経ってもラブラブだなんて凄いよな。


っていやいや、俺らだって負けてないし。


そりゃまだ俺は実家暮らしの上にバイト生活の貧乏学生だけど。


にのちゃんと過ごしてきたこの4年、俺なりの好きを精一杯伝えてきたつもり。


今年はこうして教育実習や就活でなかなかゆっくり会える時間も無くなりそうだし。


その分、会えた時は目一杯にのちゃんとの時間を大切にしたい。


もちろんアッチのこともちゃんと…



「相葉先生」

「っ、ふぁい!」


アノ時のにのちゃんを思い浮かべながら箸を口に運んでいると急に背後から声を掛けられ。


大きすぎた返事に焦りつつ振り返れば、俺と同じようにリクルートスーツを着た男性が立っていて。


「あ〜えっと…」

「あの、僕も今日から実習でお世話になってましてぇ…あ、加藤ですぅ」

「そうだ、加藤先生!」


そう言うと満面の笑みで頷く特徴的な顔。


加藤くんとは実習前の打ち合わせの時に一度顔を合わせていた。


ほとんどの学生は母校に実習に行くのが普通だけど、加藤くんは事情があって母校ではなくうちの高校に来ることになったらしい。


見た感じ、と言うか喋り方からもソッチ系の人かなって勝手に思って若干距離を取ってたんだけど。


人見知りの俺にも積極的に声を掛けてくれて、ちょっと顔の圧が凄いけど意外といいヤツだなって印象だった。


「ちょっと実習日誌のことで聞きたいんですけどぉ…この後いいですかぁ?」

「あぁ、俺でよければ!じゃ早く食べちゃうんで待っててください」


返事をするとぺこりとお辞儀をして俺たちの傍から離れた加藤くん。


するとぽつりと隣の大ちゃんが口を開く。


「俺あいつの担当なんだけどさぁ…なんか変なんだよなぁ」

「…変って?」

「ん?いやさ…なんか視線が気になるっつーか…」

「くふっ、自意識過剰じゃん」

「あん?」

「あ、すみません」


加藤くんのことで煮え切らないような大ちゃんの奥、それこそ視線を感じて目を遣ればにのちゃんと目が合い。


でも何故かすぐにぷいっと逸らされて俺の頭にはハテナマーク。



…にのちゃん?

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