
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
はぁっと小さく溜息を吐いて職員室の自席に座った。
朝から二時限連続で相葉くんと一緒に授業をしたけど。
こうも疲れた授業は今までで初めてだった。
気を張っておくのがこんなに疲れるなんて。
昨日相葉くんを追い出しちゃった後、自分なりに色々反省もした。
やっぱりきちんと指摘してあげた方が良かったのかもって。
…だけどそれより、これは俺の問題だと思うから。
俺がちゃんと相葉くんのこと大人にしてあげなきゃいけないんだってそう思ったから。
学校では気持ち切り替えないとダメだって。
今朝だって相葉くんに挨拶されて危うく気が緩みそうになったのを懸命に堪えたんだ。
だからこのまま今日一日。
とりあえず今日はこのまま頑張ろう。
今日を終えたらもう一度相葉くんに話して昨日のことを分かってもらって…
「二宮先生」
ふいに横から声を掛けられて俯いていた顔を上げると、体格の良い体育科の先生が傍に立っていて。
「これ、体育祭で使用する用具のリストです。良かったら今日か明日までに確認して頂いていいですか?」
そしてひらりと手渡された一枚のプリント。
"お願いします"と爽やかな笑みを残して去っていった先生を見つめて、また手元のプリントに視線を戻す。
用具準備係は俺と相葉くんと他学年の先生。
俺にこれが回ってきたってことは他の先生は手一杯ってことか…。
手元のリストを眺めながら、去年も担当したこの係のことをふと思い出した。
松本先生と一緒に用具庫にこもって一つずつ備品を確認していったんだっけ。
仕事中なのに櫻井くんとのノロケ話を散々聞かされた挙句、相葉くんとのアノことまで詮索された忌まわしい記憶が蘇る。
今は…校内で必要以上に相葉くんと二人っきりになるのは出来るだけ避けたい。
けど仕事だから…仕方ないか。
でもとりあえず今日はやめとこう。
せっかく意気込んでしまってるから出来るならこのまま事なきを得たい。
今日が終われば相葉くんに話して…
そしたら明日からは少し気持ちも楽になるかな…
ふっと息を溢してプリントを引き出しに仕舞い、午後の授業準備に取り掛かった。
