
原稿用紙でラブレター
第6章 愛情目盛
「夢だったのに、毎朝いってきますのチューとか!」
「そんなことしてたら絶対遅刻するってば!」
「え、なんで?ちゅって一瞬だけだよ?」
「っ、それでもだめ!」
「なんで?あ、もしかしてそれだけじゃ済まなくなるとか思ってんの?」
にやにやした締まりのない顔でそう指摘され一気に顔に熱が集まる。
「やっぱり!くふふ、にのちゃんてば何考えてんの~?」
「っ…!もういいっ!絶対住まないから!」
相葉くんに言い当てられたのが恥ずかしくて居ても立ってもいられず。
ローテーブルから財布を攫って玄関へ向かおうと一歩踏み出した時。
っ…!
背後から軽い衝撃と同時にぎゅうっと纏わる感触。
熱いくらいのぬくもりが背中から伝わり体中が包み込まれたみたいになって。
「…どこ行くの?」
「……買い物」
「怒っちゃった?」
「……」
「ごめんね、にのちゃん」
耳元で囁かれる少し低めのトーン。
いつもこう。
相葉くんにからかわれて俺も大人げなく怒っちゃって。
でも結局はこうやって宥められて許してしまう。
相葉くんの前ではどう頑張ったって余裕ぶることなんかできなくて。
それに。
「…だって俺さ、ずうっとにのちゃんと居たいんだもん」
「……」
「にのちゃんが居ないと俺生きていけない」
「っ…」
ぎゅって抱き締められながらこんなこと言われたら。
もう何年も一緒に居るのにいちいち心臓が飛び跳ねるくらい嬉しくて。
俺が勝手に思ってる"こうじゃないといけない"って固定観念をいとも簡単に壊してくるし。
だけど。
時にそれが思いがけないパワーをくれたりもする。
普段口に出来ない、しちゃいけないんじゃないかって閉じ込めてる気持ちに。
出口を指し示すような光を与えてくれる。
そんなの…
そんなのさ…
「…ねぇ、にのちゃんは?」
前に回された手首にそっと手を添えて。
誘導してくれるがままに小さく口を開いた。
「居たいよ…」
「…うん?」
「相葉くんじゃなきゃ、俺も…」
横から覗き込まれる期待に満ちた視線を感じながら。
「だから…」
「だから?」
「一緒に…住もっか…」
ぽつりそう呟いたが早いか、いきなりぐるんと体を反転させられて。
