原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
はぁ~…っと大きなため息が狭い部屋に充満する。
にのちゃんから謎の置いてけぼりをくらった俺は、とぼとぼと一人家路に着いた。
適当にリュックを投げ捨ててベッドへ仰向けにダイブする。
スマホの画面を見てもそこに文字はなく、またため息と共に期待を握った腕を投げ出した。
あれから何度電話をかけてもにのちゃんは出てくれなくて。
メッセージを送っても既読はつかないまま。
ふいのにのちゃんからのキスも、なんだか遠い過去のように思えてきて。
あの涙だって一体なんの涙だったんだろう。
ただ…
明らかに分かるのは何かしら俺に原因があるっていうこと。
最後に少しだけ見えた、切なくて苦しそうなにのちゃんの顔。
あんなに儚げな瞳を見たのは初めてだった。
そしてあんな顔のまま暗い夜道を一人帰っただなんて…
ふいによからぬ事態が脳裏を掠めて、ハッとして飛び起きる。
え、まさかにのちゃん…!
もう一度にのちゃんに電話をかけようとスマホに指を滑らせた時、画面にメッセージ受信の通知が現れた。
見ると『翔ちゃん』からで。
既読にせずとも確認できる短いそのメッセージには
『おっす。今電話できる?』
と書かれていた。
とりあえず翔ちゃんは置いといて、発信履歴からにのちゃんの文字をタップする。
コール音だけが無情に耳に届き、案の定その声を聞くことはできなかった。
胸のざわつきが治まらない。
…なんで俺、引き留められなかったんだよ。
無理矢理にでも抱き締めて離さなきゃ良かったんだ。
あんな顔のにのちゃんを一人にするなんて…
何やってんだ俺!
頭をガシガシと掻きベッドに腰掛けて項垂れると、またメッセージ受信の通知音が鳴る。
『二宮先生と一緒じゃねぇの?』
その翔ちゃんからのメッセージにはなぜかにのちゃんの名前があって。
不思議に思いながらもすぐにアプリの通話をタップした。