原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
松潤って意外とそういうタイプなんだ、なんて思いながら不満そうな声の翔ちゃんに投げかけてみた。
「ねぇ翔ちゃんたちってさ、どのくらい会ってんの?」
翔ちゃんも俺と同じ大学生だし、松潤もにのちゃんと同じく今年から担任を持ってる。
きっと会える頻度も少ないから、松潤だってちょっと心配になってるだけなんじゃないかな。
『ん~…最近は少ないかな?週3くらい』
「えっ!?」
週3も会ってんの…!?
『少ねぇよな?なんか最近忙しいらしくてさぁ』
「いや、俺ら週1だよ…」
『…えっ?嘘だろ!?』
「ほんとだよ…ちゃんと会えるの週1くらいだもん」
電話越しに『マジかよ!』という驚きの声を聞きながら、かかっていた靄が薄まっていくような感覚になった。
俺たちなんかよりずっと頻繁に会ってる翔ちゃんでさえ、松潤から束縛されてるんだ。
俺なんか…ちょっと会えるだけでも十分だなんて、毎日メールできて幸せだなんて呑気にそう思ってて。
今まで我慢してきた分、胸を張ってにのちゃんに《好き》を伝えてるつもりだった。
けどそれって…
俺が勝手に思ってるだけなんじゃないの?
想いが通じ合ってただそれだけで満足してるんじゃないの?
ふいに、さっき別れ際に見たにのちゃんの切ない顔が浮かんで。
もしかして…
俺よりずっと色んなこと考えてて一人で不安になってるんじゃないの?
『…雅紀?どうした?』
黙り込んでしまった俺に翔ちゃんが遠慮がちに声を掛ける。
「やっぱり俺のせいだ…」
『ん?なに?もっかい、』
「翔ちゃん!」
『んなっ、なんだよ!』
「俺にバカって言って!」
『…はぁ!?』
「お願いバカって言って翔ちゃん!」
『ちょ、落ち着けって!何だよ急に!』
こんなことじゃにのちゃんへの懺悔になんかならないけど、今は誰かに思いっきり怒られないと気が済まない。
「俺のせいなんだ…
ねぇお願い!バカって怒って!」
『雅紀!意味分かん、』
「お兄うるせぇバーカ!!」
ドアの向こうから叫ばれて部屋に沈黙が流れる。
『…もういいか?』
「うん、ごめん…」
笑いを押し殺すような翔ちゃんの声に、ただぽつりと返事をした。
ねぇにのちゃん…
俺の《好き》は、届いてる…?