原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
いつものようにアラームが鳴る前にパチっと目が覚める。
だけど、目覚めた瞬間に今日は特別な日なんだと実感したらやたらと心臓がドキドキしだした。
相葉くんから電話があったのは、三日前。
日曜日の予定を聞かれて、幸い部活は顧問の先生が見ることになっていたから特に何もなくて。
相葉くんはバイトだろうからと、いつも自分に予定がなくても敢えてそれを伝えることはしてなかったから。
だけど…
『え、予定ない?ほんと?良かったあ!
ねぇにのちゃん、日曜日デートしよ!』
『…え!?』
『翔ちゃんにさ、遊園地のチケット貰ったんだ。
一緒に行こうって誘われてさ』
『ゆ、遊園地…?』
『そ、遊園地。ね?行こうよ!
翔ちゃんと松潤も一緒だから』
電話口で弾むような声の相葉くんを思い出して、治まらない鼓動にふうっと細く息を吐く。
目の前に掲げたスマホに視線をやると、相葉くんとのメッセージ画面に今日の待ち合わせ時間が記してあって。
相葉くんと"デート"の日…
とうとう、きちゃったんだ…
仰向けのまま画面を見つめてから、放っておいたらどんどん高鳴る心臓を打ち消すようにがばっと起き上がる。
メガネをかけて顔を洗いに行こうとすると、ドアの側の姿見に映る自分に目が留った。
荒波に揉まれたかのようにうねった髪の毛。
パジャマ代わりの着古したロンTに、高校から使ってるえんじ色に三本線の入ったジャージ。
改めて自分の恰好を見て、途端に今日の"デート"に不安が募りだして。
待って…
今日、なに着てけばいいの?
えっと…あのシャツどこに仕舞ったっけ?
あのズボン…え、うそっ穴開いてる!?
カ、カバンは…さすがにこれはないか。
あー、とりあえず寝ぐせ何とかしなきゃ!
メガネは…
部屋の中をあたふた動きつつ、ずれてきたメガネを上げながらふと立ち止まる。
メガネは相葉くんに言われてからは自宅以外ではほとんどかけていない。
相葉くんが家に来るようになってからはそれもほぼなくて。
だって…
いつでもキスできるようにしててって相葉くんが言うから…。
そんなことを考えるとまた無駄にドキドキしだして。
赤くなる顔を洗い流しに、メガネをかけ直してそそくさと階段を下りた。