原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
フードコードでの遅めの昼食でも、ふいに目が合うと恥ずかしそうに控えめな笑みを向けるにのちゃんに何度も気持ちが昂りそうになり。
普段から小食なにのちゃんの手元には、そんなに量のないサンドイッチが半分ほども残されていて。
「もういいの?お腹減ってない?」
「あ、うん。なんか…もうお腹いっぱいになっちゃって」
「え、先生食わねぇの?俺貰っていいっすか?」
「あ、はい。どうぞ」
向かいで自分のカレーライスを頬張りながら、にのちゃんのサンドイッチにも手を伸ばす翔ちゃん。
「あ、翔こっち向いて」
すると、翔ちゃんの隣で同じくサンドイッチを齧っていた松潤が翔ちゃんを呼んで。
「ここ、ついてる」
そう言うと、翔ちゃんの口元についたご飯粒を摘まんで自分の口に持っていった。
「…っ!や、やめろって!
ガキじゃねえんだから!」
途端に顔を赤くして反抗する翔ちゃんに見てるこっちが恥ずかしくなりそうで。
横のにのちゃんも赤い顔で俯いてストローに口をつけている。
よく考えたらにのちゃんと付き合ってから今まで、にのちゃんにしっかりと触れたことは数える程しかなくて。
ぎゅっと抱き締めたり、抱き着かれたり。
キスしたり、され…たのは一回だけだけど。
そんなのも全部、数えられるくらい覚えてるし。
そんなにのちゃんとの日々を振り返っても、きっと俺だけがこんな気持ちなんだろうなって。
だから、そんなにのちゃんの気持ちを大事にしたくて沸き上がってくる想いを今まで何度抑え込んできたか。
けど…
身近にそんな話を聞いてしまったら、俺だって一端の健全な男子なんだし。
いつかはにのちゃんとって…
ふいに、俺の視線に気付いたにのちゃんがこちらを見上げた。
「…どうかした?」
「っ、いや…あ、あのさ!
このあとってどうする?」
赤くなった顔をごまかすように取り繕ってみんなにそう提案する。
「そうだなぁ…翔たちも乗れるやつあるかな。
あ、メリーゴーランドは?」
「は?あんなのイヤに決まってんだろ!」
「え~乗ってるとこ見たいのに」
「誰が見せるかよっ」
「あの…」
向かいで繰り広げられる会話の間に、ふと小さくにのちゃんの声が割って入った。