原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
続く沈黙。
耐えられなくなってそっと口を開いた。
「あ、」
「あの、」
ほぼ同時に零れた言葉に二人して顔を見合わせる。
やけに近過ぎる距離に一瞬で顔に熱が集まるけど、それはにのちゃんも同じのようで。
赤く染まった頬と少し潤ませた瞳で見つめられ、つい言葉に詰まってしまう。
「…なに?」
にのちゃんが俺に促すようにそう言うけど、苦し紛れに切り出したから何も考えてなくて。
頭の中で言葉を巡らせている内に、あることを思い出した。
そういえばあのこと聞かなきゃ…!
「あの、さ…。にのちゃん、学校でイヤな目に遭ったりしてない…?」
言い終えてごくっと息を飲み込み、ジッとこちらを見つめる瞳を見つめ返す。
すると、ふっと一瞬力が抜けたような表情になって。
困ったように眉を下げながら口を開いた。
「さっき櫻井くんからも聞いたけど…。
ごめんね、なんか…心配かけて」
そう言って申し訳なさそうな眼差しを向けるにのちゃんに、一気に胸がざらつき出す。
「あの…有岡ってヤツになんかされたの?」
「…え?」
「アイツにのちゃんのこと絶対狙ってるから」
「待って、なんで有岡くんのこと知ってるの?」
眉根を寄せる俺を制して不思議そうな顔で訊き返すにのちゃんに、この間学校で有岡に会ったことを話すと『あぁ』と至って普通に返してきて。
「確かに有岡くんにそんなこと言われたけど…
別に何かされた訳じゃないよ。
俺も特に相手にしてないし」
『ちょっと元気が良すぎるけど』と付け加えてふふっと笑うその顔に、呆気に取られたように口が開いてしまう。
なんだ…そっかぁ。
良かった、俺の勘違いで…
そう心の中で呟けば、ふっと安堵が胸に広がった。
…けどアイツは厄介そうだからな。
引き続き要注意人物にしとこ、うん。
「あのね…」
ふいににのちゃんが口を開いたから、有岡のことを頭から一旦離して目を向ける。
「心配かけて…ごめんね」
「…うん?」
「また相葉くんに…変な心配かけちゃって、」
さっきの口振りとは変わって、急にもごもごと話し出すにのちゃん。