原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
半ば倒れ込むように両腕に収まった細い肩や、首元に触れる火照った頬の感触。
今まで何度か感じている筈なのに、今日はやけにそれらが研ぎ澄まされているようで。
触れている何もかもがどうしようもなく愛おしい。
これまで押し込めていた"その先"を意識した途端、こうも感覚が変わるものなのか。
余りに正直な体の反応を自覚しつつすうっと鼻から空気を取り込むと。
ほのかに香るシャンプーの匂いにまたドクンと熱が込み上げる。
にのちゃんもそれに合わせるように肩口におでこを押し付けて。
背中に添えられていた手は俺のシャツをぎゅっと握る。
そして、くぐもった小さな声が耳元に届いた。
「どきどきする…」
そのまま、更にぎゅっとおでこを押し付けられて。
「…相葉くん、だめ…どきどきしてもう…」
そう言って苦しそうにはぁっと息を吐いたにのちゃんに、抑えようとしていた昂りが一気に沸き上がってくる。
「…にのちゃん」
「…はい」
「顔、上げて…」
ドクドクと鳴る鼓動が鼓膜に纏わりつく中、震えそうな声で囁きかける。
すると押し付けていたおでこが首元へ身動ぎ、一層しがみついてきて。
頑なに顔を上げないその仕草にも心底堪らなくなる。
「…にのちゃん」
「……」
「顔…見たい、」
もう一度そう問い掛ければ、一呼吸置いてふわっと柔らかい髪が口元を擽った。
躊躇いがちにゆっくりと上げられたその顔は、今まで見たことないくらいに色っぽくて。
切なげに揺れる瞳は赤く潤んでいて、色白な頬は耳までも同じ色に染め上げている。
…にのちゃんごめん。
俺もう、我慢しなくていい…?
その瞳を見つめながらそっと顔を傾けると、寸前でぎゅっと閉じられた瞼が視界の端に映った。
出来るだけ優しく、そっと重ねた唇。
沿うように合わさった感触に言い表せない心地良さを感じる。
同時に、これまで抑えていた欲が雪崩のように押し寄せてきて。
あ、もう…
やっぱりだめだっ…!
固まったまま動かないにのちゃんの後頭部に手を添えて、吸い付くようにその唇に自分のを押し付けた。