原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
「はぁっ!?あん中でんなことっ、」
「ちょ、翔ちゃん!」
ファーストフード店の端の席から、向かいに座る翔ちゃんの驚いた声が店内に響き渡った。
「もう声デカいってば!」
「あ、わりぃ…いやつぅかマジ?」
「うん、マジ…」
ぽつり返すと、眉根を寄せていた翔ちゃんが悟ったような顔でストローを口に持っていった。
日曜日の遊園地Wデートから、今日で三日が経つ。
あのあとから…
にのちゃんとは音信不通になってしまっていて。
いや、正確にはにのちゃんから無視されている。
電話もメールも返事はなく、学校に会いに行っても俺を避けるように表に出てこない。
…まぁ、そうされても仕方ないんだけど。
あの日、観覧車から降りた後にのちゃんはずっと喋らずに俺と目を合わすこともなくて。
異変に気付いた松潤が話しかけても『何でもない』の一点張りを貫き通し。
現地で解散になって一緒に乗った電車内でもずっと押し黙っていた。
何度か謝罪の言葉を含めて話しかけたけど、唇をぎゅっと噛み締めるだけで何の反応もなくて。
原因は痛い程分かっていたから、もうそれ以上話しかけることも出来ずにただ二人で電車に揺られていたっけ。
家に着いてから改めて電話をかけても案の定出ず、謝罪の長文メッセージを送っても既読にならず。
今更ながら事の重大さを思い知らされて、今に至る。
「お前ら全然降りてこねぇからさぁ、おかしいと思ったんだよな」
ポテトを摘まみながら翔ちゃんが呑気な声で話す。
「途中揺れてたのってそれ?」
「…っ、言うなよ!」
「いやそりゃないだろ~さすがに」
頭を振りながら『ないない』と言ってポテトをパクつく翔ちゃんを、思わず恨めしく見つめる。
…元はと言えば松潤が俺にあんなこと言うからだよ。
"気持ち良い"とか…
そんなん聞いちゃった後に"シたい"なんて言われたら…
抑えらんなくなるの翔ちゃんだって分かるよね!?
ていうかさ…
「翔ちゃんもうシてんじゃん…」
「…は?何を?」
「シてんでしょ?松潤と」
「…はっ!?お前それ何でっ、」
急に赤い顔になって慌てだした翔ちゃんから問いただされるけど、頭の中はにのちゃんのことでいっぱい。
とんでもないことになっちゃったなぁ…。