原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
「だから居ねぇっつってんだろうが」
しつこく問いただす俺に、さすがの大ちゃんも若干イラつきながら返してくる。
「なんで?野球部居なかったじゃん!にのちゃんどこ?」
「だから知らねぇって。あのなぁ、俺は二宮先生のガードマンじゃねんだよ。忙しんだからもう帰れやっ」
そう言って背中を押しながら物理準備室のドアまで押し返されて。
「ちょ、待ってっ!
あの…にのちゃんどうしてる?」
「あ?」
「いや、にのちゃんと…連絡取れないからさ…」
「お前なぁ…」
目線の下の大ちゃんを窺うように見つめると、心底うんざりした顔で溜息を吐かれた。
はぁっと再び大きな溜息を零し、頭をぽりぽり掻きながらくるりと後ろを向いて奥のデスクに腰掛ける。
「…今度は何したんだよ」
デスクに頬杖をついて目線で座るよう促され、実験台の丸椅子を引いた。
事の経緯を一部始終話し終えると、眉根を寄せた大ちゃんが頬杖をついたまま口を開いて。
「お前はバカか」
「なっ…」
そんなこと自分が一番分かってる、と胸を張って言えるような内容ではないけど。
改めて人から言われると、つくづく俺ってバカなことをしてしまったんだと思い知らされる。
「外でんなことやるかバカ」
「っ、もうバカバカ言わないでよ!
分かってるよそんなの…」
「分かってねぇからやっちまったんだろうが」
今日の大ちゃんは心なしか少し厳しい口調で。
内容が内容なだけにそれは無理もないけど…。
膝の上でぎゅっと拳を握り締めて、遣り場に困った視線を黒い実験台に落とす。
「…で?どうしたいんだよお前は」
その言葉に顔を上げれば、頬杖をついたままジッとこちらを見つめる鋭い瞳とぶつかって。
どうしたいって…
「このままでいいのか?」
「やだよ!ちゃんと謝りたいし…」
「謝ってそれで?」
「謝って…許して貰えるなら、また…」
「また?」
「また…今までみたいに、傍に居たい…」
ぽつり言い終えて、自分で口にした言葉になぜか熱いものが込み上げてくる。
にのちゃんごめん…
俺ほんとバカだった。
どうしようもないガキだったよ。
こんな俺のこと…
許してくれるのかな…