原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
堪えるように唇を噛み締めた時、間延びした大ちゃんの声が頭上に降ってきた。
「けどなぁ…今回はお前、相当やばいんじゃねぇか?」
そのセリフに似つかわしくないのんびりした声でそう言うと、溜息をひとつ溢して続けた。
「二宮先生な、お前に絶対会いたくないって言ってんぞ」
「…えっ!?」
頬杖をついてジッと見つめられ、呆れたような顔でまた口を開く。
「"とにかく今は会えないから相葉くんが来ても居ないって言ってください"って言われたよ」
「え、うそ…」
「嘘じゃねぇ。あのなぁ…いっつも理由聞かされねぇでただそんな事言われる俺の身にもなれっ!」
わざとらしく口を尖らせた大ちゃんが眉根を寄せて愚痴ってくる。
やっぱり…
許してくれるわけないよね。
"絶対会いたくない"なんて…
言われると思わなかった…。
翔ちゃんと居たさっきまでは、やばいと思いながらもきっと元通りになるだろうって心のどこかで信じ切っていた。
もしかしたら…
時間が解決してくれるんじゃないかって。
だけどこんなにも直球で拒否されてしまうなんて。
ほんと俺…
取り返しのつかないことしちゃったんだ…!
今更ながらストンと心に落ちてきて一気に焦燥感に駆られた。
「大ちゃん!俺っ、どうしよ…」
「知るか!今回はなぁ、自業自得だ!」
「えっ、ちょ大ちゃん!」
突き放すように告げられ、思わず立ち上がり丸椅子がガタっと倒れる。
「そんなこと言わないでよ!」
「あぁ?」
「大ちゃんどうしたら、」
「あのなぁ、大ちゃん大ちゃんっていつまで俺に頼ってんだよ!」
勢いのままに言った俺に被せるように大ちゃんも一際大きな声で返してきて。
「いつまでも何ガキみたいなこと言ってんだよ!
自分でやったことだろが!ちゃんと責任取れっ!」
それは、今まで見たことないくらい真剣な顔で。
「…俺んとこ来る前にやることあんだろ。
ちっとは考えろ、バカ」
最後は静かに諭すように発した言葉が、胸にズキンと突き刺さる。
大ちゃんに、初めてに近いくらい真剣に怒られた。
いや…
怒ってくれたんだ。
「…忙しいからもう帰れ」
その場から動けない俺に後ろを向いてぽつり言ったその声は、いつもの優しいトーンでまた泣きそうになった。