原稿用紙でラブレター
第3章 消費期限は本日中
迎えた、12月24日。
クリスマスイブの夕方にコンビニにこんなに人が来るものなんだろうか。
一気に混み始めた店内を見て、そろそろ上がる時間なのに後ろめたさが募り出す。
結局、怒らせてしまったと思ってたにのちゃんへのメッセージは翌日の夜にちゃんと返ってきた。
『寝てしまっててごめんね』という言葉で始まり、それからは至って普通のやり取りが続き。
あれから今日の俺の誕生日まで、あのコトには一切触れられることはなく。
…いわゆるスルーされたってことだよね。
まぁ、怒らせてなかっただけいいけどね…。
レジに並ぶ行列にあくせくと対応していた時、自動ドアが開きまた一人客が入ってきて。
チラリ視線だけ入口に向ければ、見知ったその顔と目が合った。
え、翔ちゃん…!?
ニッと一度だけこちらに笑みを向け、澄ました顔で店内に進んでいく。
そして行列が落ち着いた頃を見計らうように翔ちゃんがレジに向かって歩いてきた。
「よぉ、お疲れ」
「え、どうしたの今日は」
「いや別にフツーの買いもんだけど?」
そう言ってまたニッと笑う翔ちゃんは、襟元にファーの付いた暖かそうな黒のブルゾンをカッコ良く着こなしていて。
いかにも
"今からクリスマスデートです"
といった雰囲気。
「デートなんじゃないの?
いいの?こんなとこ来て」
「いや、早く着き過ぎちゃってさぁ。
さみぃから中入ろうと思って」
「ふふっ、なに暇つぶし?」
「ちげーよ。雅紀に渡すもんもあるしな」
言い終えてレジ台にガサっと置かれた小さな紙袋。
「誕生日プレゼント。俺と松潤から」
驚いて目を上げれば、ポケットに両手を突っ込んだ翔ちゃんが照れ臭そうに鼻をスンと啜る。
「わ、ありがと…」
「気に入るかわかんねぇけど」
ふふっと笑いながら紙袋に視線を落とし、レジ横のホットドリンクコーナーから缶コーヒーを二つ取ってレジに置いて。
「いい誕生日になるといいな」
と笑う翔ちゃんがやけにカッコ良く見えた。
自動ドアから出ていく背中を見送って、貰ったプレゼントをレジの下に隠し。
『翔ちゃんも楽しいクリスマスになりますように』と心の中で呟き、また混みだしたレジに小さく意気込んだ。