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Best name ~ ひまわりとの約束 ~

第20章 あの夏の・・・約束

さすがになにかと突っ込まれるかな

と、思ったけど

彼女は…驚くくらい

ボクになにひとつ聞かなかった






『・・・すぐ、済ませるから

ちょっとだけ待っててね』




車を停めて彼女を残し

ボクはひとり降りようとする








『・・・ゆっくりしていらして下さい』






『すぐ戻るよ・・・。

はは・・・なんか、みっともないとこ

見られちゃったね・・・♪』








『・・・どこが・・・ですか・・・』





『・・・~~(苦笑)』







『先生のどこが・・・

なにが…みっともないんですか・・・?』







深い意味なく…言ったつもりなのだけど


ボクの何気ないその言葉に


彼女は…少し声を震わせ

語気を強めて


そして・・・涙を浮かべていた







『・・・ふふ・・・(苦笑)』




そんな、まっすぐな目で見ないでくれよ

たのむからさ・・・



それこそ

調子狂っちゃうじゃかないか・・・ボク







『・・・大切な・・・方・・・なんでしょう?』






『・・・~…♪』






『・・・ちがうんですか?』




彼女は涙を拭い

ニコリと笑って

後部座席の花束をそっとボクに渡してくる





『・・・。・・・』






『みっともなくも…カッコ悪くもない。

良いじゃ・・・ないですか

忘れなくたって。忘れようとしなくたって』






『・・・ぇ』






『誰かが…先生が、忘れずにいることって

その人の生きた証や…その存在を

ずっとこの世に遺せる事だと思うから』





『・・・』






『その人の命を…誰かが語り継いで

その人が・・・何て言うのかな

誰かと誰かを…繋いでいくみたいに

環(わ)になって・・・ずっと

みんなを繋いでいって

くれるみたいじゃないですか』





『・・・~~』




『だから…忘れる必要なんて

どこにもないと・・・私は、思うんです』





『・・・』




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