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Best name ~ ひまわりとの約束 ~

第20章 あの夏の・・・約束

『ケイゴくん・・・驚いた~

久しぶりねぇ・・・♪』




『・・・』



ご無沙汰してます・・・くらい

言えたはずなのに



当たり前の言葉がなにひとつ出てこない


ボクは咄嗟に黙ってただ頭を下げた





気まずいなんてもんじゃなかったんだ。




まさか、こんな所で…と言うか

よりによって、こんな場面で

彼女のお母さんに会うなんて

まったくの想定外・・・



思いもよらない事だったから。





・・・とは言うものの


それも変な言い草なんだよね




彼女の・・・墓なんだから


彼女の家族…親族が現れて


なんの不思議もないこと




むしろ・・・この場にいて不自然なのは




他でもない、ボクの方なはずだから。






『ケイゴくん・・・立派になって

ぇと・・・今は~・・・』




『・・・ぁ・・・はい、一応』





『わぁ…本当?…お医者さんやってるの!

すごいわねぇ……ハァ~…本当に立派になって』





『・・・』



とてつもなく・・・気まずくて

とてつもなく・・・照れくさかった




未熟で生意気なボクの少年期を知る

彼女のお母さんに会うなんて



なんだか一瞬で

自分の歳も…職業も忘れたかのような



タイムスリップでもしたかのような

懐かしい気持ちになっているような

複雑な気持ちだった





懐かしい・・・




そう語るには十分・・・十分過ぎるくらい




10・・・何年ぶりかに会うおばさんは



白髪やシワが少し増えたその姿は


その年月を物語るけれど




ニコリと・・・



優しく微笑むその笑顔は





彼女に



カンナにそっくりな


優しい…その笑顔は


ちっとも変わっていなかった

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