
ねぇもう嫌・・・
第15章 エコー
先生は私の肩に手を置きながら言った。
「陽菜ちゃん、そんなに泣くことないよ?
陽菜ちゃんの身体が人一倍敏感なのは、僕も柊も知ってるから…」
えっ?
人よりも敏感って……
何それっ…初めて聞いたんだけど…っ
その後の先生の言葉が耳に入らない…
…医者だから、ヒトの身体をなんでも知ってる…
ましてや担当の患者のことなんか、網羅してるに違いない…
私のプライベートがどんどん…っ
も〜〜会いたくないっ…
「…っ」
「陽菜ちゃんの本音とか心の中は僕や柊には分からないけど、陽菜ちゃんの身体とか症状で、今こんな事で悩んでるんじゃないかなってある程度分かるんだよ。」
最後の先生の言葉に何故か安心感のようなものを抱いた。
「っ…」
いてもたっても居られなくて、手に持っていた鞄の取っ手を強く握り直した。
先生は私の肩から手を下ろした。
「…此処でごめんね。頑張るのはあと少しだけだからっ。またいつか。」
泣きじゃくる私をそのままに、先生はまた車に戻って行った。
「っ…」
胸の奥が痛くて、周りの視線も痛くて、
この後どうしよう…
もうこのまま意識を失いたい…
そんな逃げ道ばっかの妄想が何度も頭の中を巡った。
先生は仕事で、また何気ない日常に戻るだけなのに、
私だけ…
私だけが……
