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ねぇもう嫌・・・

第21章 検査④



「ひなちゃん。」




エコーを持つ手の反対の手で肩をぽんぽんと叩かれた。




「大丈夫?できる?」




神木先生の声が耳に届く。




「っ…」




少し俯くと、また熱い涙が溢れた。




「うーん…」




本当は、こんなのやりたくない…




今すぐ部屋から飛び出したい。




でも逃げ場が一つもない…。




私は、何かを掴むことでそこにぎゅっと力を込めれば踏ん張ることが出来るの。




昔からそうだった。




だから、学校でみんなの前で発表する時とか、




何か大きな責任を感じたり、負ったりする時は、よく手で拳を作ってぎゅっと握ってた。




でも今は、拳を作ることさえ難しい。




全く力が入らない。




自分の手が、自分の手じゃないみたい…。



















prrrrr




誰かがPHSを鳴らした。




「あっ如月です。




ひとり誰かお願いできますか?…」




応援を呼ばれた…?




「っ…」




もう要らない…




十分だから…っ




もう逃げないし、逃げられないから…。




「っはぁっ…ぅ、はぁ…」




駄目、呼吸が苦しい…っ




呼吸とお腹が連動して激しく波打つ。




咄嗟に窓際にいる如月先生の方を向いた。




「大丈夫っ?」




後ろから背中をさすられて、




前から私の顔を覗く人の顔。




胸なんか隠す余裕がなかった。














それでもなんとか落ち着き、電極を付け直されて、再スタート…




両手を上げて両目を隠すと、




その安心感でまた熱いものが溢れた。




それは目尻からこめかみに伝わり、そっとシーツを濡らす。




「じゃあ、始めるよ。




ゆっくり深呼吸して、





リラックスしててね。」




そう言いながら、神木先生がゆっくりとエコーを近づけた。




その気配に、思わず目をぎゅっと瞑った。




「っ…」




胸の真ん中にヒヤッと冷たい感触。




「っ動かないで。」




…動いてなんかないし…っ。




ぬるぬると滑(スベ)るその機械が嫌だ、。




その先端に近づくほどに、痛みは増していく。





「っ……」






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