
ねぇもう嫌・・・
第22章 時に神を憎むほどの出来事が襲っても…
小盛りのご飯を手に取ると、小さな塊を箸の上に乗せて口元に運んだ。
米粒と唾液が絡み合う。
「…」
とても美味しくは感じられなかった。
不味くて、二口で手を止めた。
『俺のことが気になる?』
箸が止まっている私を見兼ねて柊先生が言う。
『この間に準備してくるから、ゆっくり食べて。』
襟元を掴んで白衣を整えながら柊先生が立ち上がった。
『全部とは言わないから、できるだけ食べな。
残ったのは俺が食べるから。』
柊先生はそう言うと、パタパタと靴の音を響かせて部屋を出て行った。
再び柊先生が戻ってくる頃も、私はずっと口を閉じていた。
一度不味いと思うと食べれなくなる。
それに、柊先生が食べてくれるなら…。
甘えに甘えを重ねたお子ちゃまな私の考えは、
柊先生を目の前にしても変わらなかった。
柊先生におぼんを向けると、私が口付けた箸を使ってパクパクと食べ始めた。
ちゃんと食べてくれなきゃ困るって言ったの柊先生なのに、いいのかな…
カチャカチャと食器の音のそばで、私はずっと俯く。
食べ終わり、箸をおくと、
柊先生はようやく話せるといわんばかりに、
少し息を吐いて私を見た。
目線はそっぽを向いていても、私のことを凝視しているのは気配で分かる。
『…最初に…お説教からいこうか。』
「…っ」
その一言で何を言われるか見当がついた。
『心エコー、どうだった?』
「っ…」
まるで私に答えを求めていない。
寧ろ黙って聞けというように、柊先生の口調はいつも以上に冷たい。
「…」
『神木先生から聞いたけど…まぁそうだよな。
…うん、俺も絶対できないと思った。』
「…っ?」
むくっと顔を上げた。
『っ。あの朝の時点で分かってたよ。
あんなに嫌がるんだから、トントン拍子には行かないだろうなって。』
「…」
