
ねぇもう嫌・・・
第22章 時に神を憎むほどの出来事が襲っても…
柊先生がくすっと笑った。
『ねぇ、目腫れてるよ?昨日の終わった後また泣いたの?』
慌てて首を横に振った。
全治5秒だったはずの目の充血は、コントロールミスで涙がちょっとだけ零(コボ)れた。
『毎日苦しいね。見てて分かるよ。』
『俺も、少しだけ迷ってて。』
ついさっきの"俺も時間が無いんだよ"と言った柊先生と、明らかに違った。
この部屋を支配してるのは柊先生なのに、縛られてる感覚は不思議と無くて。
涙さえ無ければ、いつもよりは話せるのに…。
『あのね、何か併発してるものがあるかなと思って昨日心エコーやってもらったんだけど。』
"きちんと出来なくて2回やることになっちゃったけどさ"
柊先生の時折するジェスチャーに、単純なことだと気づくほど、複雑な思いが溢れてくる。
「…うん」
私が頷くと、柊先生も"うん"と優しく返してくれた。
『特に異常は無かったよ。』
驚きに交わる安堵。それに小さく頷いた。
『でも、突然苦しくなるのはやっぱり何かあるだろうから、今の入院と合わせてもう少し検査することになるかな。』
「…」
『君の事は俺から言っておくから、心配しなくていいよ。』
柊先生は、私の"心配"をまるで分かってない…。
「…っ」
乱れた髪を直すふりをして、私は顔を隠した。
泣きそうっ…っ。
"嫌だ"って、誰にも伝わらずに頭の中だけを駆け巡る気持ちを、もうひとつの私がせき止めている。
検査って何やるの…?
痛い?苦しい?それとも…
…否っ。
涙を我慢しようと、唇を強く噛み締めた。
