卑怯なボクは深海魚
第4章 不愉快なオアシス
俺は木の下で荒くなった息を整えながら――――…
あの日のキスを思い出していた
5分――――…いや、もっと短かったかもしれない
なのに――――…鮮明に覚えている
彼女の今日のキスは思い出せないのに…
アイツのキスは――――…
鮮明に思い出せた
木に寄りかかり…
見上げる
葉の隙間から――――…星がちらほらと見えている…
「――――…お前は…いったい――――…何者なんだよ…」
俺は…そっと唇に指を置く――――…
そう言えば…
あの日のキスは――――…涙の味がしていた