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罪と罰

第1章 1

「兄妹で愛し合うなんていけないことだって周りから言われて、でもそれでも私はお兄様のことが忘れられなくて…。お兄様も私と同じ気持ちでいてくれたから…だから私たち地獄に墜ちるのを覚悟して命を絶ったんだよね…」

俺の脳裏に崖から飛び降りる風景がぼんやりと浮かびあがった。

──そうだ、俺は愛する妹と自殺を図ったんだ。
二人一緒なら地獄に堕ちてもかまわない、と思いながら。
しかし俺たちは別々の場所に落とされた。

「なのに私たちは引き裂かれてしまった。私ね、地獄では何度も体を切り刻まれたり、舌を杭で打たれたり…炎で体を焼かれたりしたの」

うっ、と俺は口元を押さえた。
それならば今、ドアの向こうにいる女は一体どんな姿をしているのだろうと思った。

「私、ずっと耐えたわ。お兄様に会えることだけを願って耐え続けたの。死ぬほど痛かったけど、いつかお兄様が迎えにきてくれることを信じて耐え続けたの」

「…っ…」

愛する妹は罰を受けながら、自分をずっと待っていたようだ。しかしどうやら俺の方が早く転生してしまったらしい。

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