笑い、滴り、装い、眠る。
第8章 花梨―唯一の恋―
「……。」
俺のことはリサーチ済み、ってことか?
准「このあともバイト行くんだろ?」
「……。」
准「…脂ぎったジィさんとこにさ?」
弾かれたように振り返ってヤツの顔を見た。
准「俺、外見はあれだけどあんな脂ギッシュじゃねぇし、アッチも出せると思うけど?」
パッと見、ちょっと濃い目のイケメン。
不敵に笑いながら人差し指と親指で作ってみせた輪っかに舌打ちする。
「俺はナニをすればいいんだっけ?」
准「話が早いな?ま、取り敢えず一緒に来てくれ。」
言われた通りついて行くと目の前には黒塗りの車があって、
運転席から降りてきた男がドアを開けてくれた。
……どうやら、正真正銘のお坊っちゃまらしいな?
そんなお坊っちゃまが、何の酔狂で俺に声なんかかけてきたんだ?
だが、そんな疑問は、車に乗り込んですぐに解けた。
車のドアが閉まる音がしてすぐ、准一は俺の肩を抱き寄せキスしてきた。
准「さすがに馴れてんな?」
いきなりキスされても動じなかった俺の唇に残ったキスの余韻を親指で拭った。
「……そんなことねぇよ。」
今度は俺の方から准一の顔を引き寄せ、さっきよりも少し長めのキスをしてみせた。
「キスの安売りはしない質なだけだから。」