笑い、滴り、装い、眠る。
第10章 Moon Light
「あ……あの、翔くん?」
俺に背を向け、無心にパソコンのキーボードをメガネをかけた翔くんが真剣な顔で叩く。
ブルーライト用のメガネなんだろうけど、
真剣な顔つきも相まってちょっと怖いから話しかけづらい。
けど、前室で見せたあの眼差し。
俺に何か言いたそうにしてたから……すっごく気になる…。
「…のさ、なんか…怒ってる?」
返事はない。
でも、怒ってる、っていう空気はすんごく伝わってくる。
「俺…何かした…かな?」
相変わらずカタカタとキーボードを叩く音しか聞こえてこない。
これだけ下手に出てんのに無視かよ?
さすがの俺もイラっとして、無理にでも振り向かせようと手を伸ばした時、翔くんが不機嫌そうにくるり、と振り向いた。
翔「今仕事してんだけど?」
「んなん、見りゃあ分かるよ!」
翔「もう、分かったから。で、何?」
面倒臭そうにメガネを外す。
何だよ?その態度は?
返事いかんによっては、と、息巻いていると翔くんは俺から顔を背けた。
可愛くねぇな……。
まあいいや。
「俺に言いたいこと、あんだろ?」