笑い、滴り、装い、眠る。
第11章 SUN SHINE
この世界に入ったばかりのあの日、
「あの子のやる通り、踊ってみなさい。」
大人にそう言われ、指差す方で踊っているその人を見た。
軽やかなステップ、寸分のブレのないターン、無駄のない動き。
そして、余裕からだろうか、飄々とした表情は経験差というよりは年齢差を感じさせる。
でも、年は俺の一つ上。
入所時期も一年早いぐらいだった。
それなのにこんなに差がつくものなのか、と、思っていたが、彼だけが特別だった、と知るのにそんなに時間はかからなかった。
先輩のバックとして踊っているはずの彼の姿を、いつの間にか目で追っていた、なんてことは珍しくなく、同期で入っている奴らの殆どがそうだった。
こんな凄い人が一年先輩にいるなんて…
先が見えたような気がして、俺は高校卒業と同時に退所しようと心に決めた。
が、人生何があるか分からないもので、
俺と彼と、他の三人でのCDデビューが決まってしまった。
大学進学を考えていただけに、とんだ大番狂わせもあったもんだ、とため息をつく傍らで、
俺はあのスゴい人と同じグループに身を置くことになった奇跡に、戸惑いすら感じていた。