笑い、滴り、装い、眠る。
第14章 猫と俺とアナタと…
翔side
出会いは突然訪れた。
その日は午後から激しい雨で、偶然持っていた折りたたみ傘のお陰で、カバンで雨つぶを凌ぐ人々を横目に家路を急いだ。
が、いつもの曲がり角で、傘もささずにしゃがみ込む人影に足を止める。
よく見ると、その人の足元には小さな箱があって、その人はその箱の中に手を伸ばし何やら語りかけていた。
その人の手の中には、小さな小さな仔猫がいて、
その人は仔猫が濡れないよう、身を屈めていた。
やがてゆっくり立ち上がるとゆっくりとこちらを振り返った。
すたすたとこちらに向かって早足で行き過ぎようとしたところで俺は思わず彼に向かって傘をさしかけた。
驚き振り向いたその人が口を開きかけたが、俺は構わずにこう言った。
「その子達、早く病院連れていかないと…」
勝手にしろ、と言わんばかりに歩き出した背中に続いて歩き出す。
幸い、仔猫たちはいたって元気で、お腹が空いていたのか与えたミルクをあっという間に飲み干した。
智「さてと…」
病院を出て、それぞれに仔猫を抱えた俺たちはいきなり現実にぶち当たる。
智「……コイツら、どうすっかな?」