笑い、滴り、装い、眠る。
第14章 猫と俺とアナタと…
何か言いたげに見つめる彼の両眼に、言わんとすることは容易に汲み取れた。
「あの、俺んとこは……」
智「……別にいいよ。知り合い当たるから。」
「……ごめんなさい。」
智「でも、一個だけ頼まれてくれるか?」
「え?」
智「ちょっとの間だけコイツら見ててくれ。」
彼は腕の中でミャアミャア鳴きつづける小さな二匹を俺の手の中に抱かせた。
智「傘、買ってくるからさ?」
ニコッと笑って、道路を挟んだ向かいにあるコンビニを指さした。
「あっ……う、うん。」
キョロキョロと左右を確認しながら道路を渡っていく。
智「お待たせ。ありがとな?」
ビニール傘と、ついでに何か買ってきたらしいレジ袋を提げ戻ってきた。
智「俺とコイツらのメシ。それと…」
ごそごそと袋の中を漁りながらあった、と呟く。
智「これ、付き合ってくれたお礼。」
と、俺の制服のポケットに何かを突っ込んだ。
智「俺が好きなチョコレート。」
「あ、ありがと。」
智「ついでにもうちょっとだけ付き合ってくれ。」
「は、はい。」
俺はそのまま、仔猫たちを抱えた状態で彼の家へと向かった。