笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
智side
僕と彼が初めて会った日は文字通り、バケツを引っくり返したような土砂降りの雨の日だった。
その突然の土砂降りの雨に見舞われたにも関わらず、彼は太陽のような眩しい笑顔を僕に向けた。
翔「参ったなあ。ずぶ濡れだよ。」
眩しいくらいの笑顔に、呆けたように見つめていた僕は、彼の前髪から滴り落ちる雨粒に我に返った。
「い、今、タオル持ってきますね?」
どうしたんだろ?
心臓の音がやけにうるさい。
「これ…使って?」
濡れた髪を掻き上げる仕草に、タオルを渡す手が震えた。
翔「あ、ありがと…」
不意に、ドングリ眼の大きな目が僕をじっと見つめてきて、僕よりは明らかにがっしりした腕が僕の手を捕らえた。
え…?な、何?
翔「寒いの?」
「え…」
翔「だって、震えてるから。」
慌てて手を引っ込めると、タオルが僕らの間にぱさりと落ちた。
「ご、ごめんなさい!!今、新しいタオルを…」
と踵を返した時、せっかく振りほどいた腕にまた捕まってしまった。
翔「…いいですよ?気にしないで?」
彼は拾い上げたタオルで、滴り落ちる雫を拭った。
「じゃあ、何か温かい飲み物でも…?」
翔「そう?せっかくだから頂こうかな?」
期せずして掴まれた手の温もりを噛みしめるみたいに僕は、
その場所をそっと胸の中に掻き抱いた。